農村と都市の共同でつくるあらたなドラマ

●農村と都市の共同でつくるあらたなドラマ

 梅林のウメが開花し、かぐわしい香りにつつまれる二月の上秋津。季節とともに表情を変える高尾山、奇絶峡の荒々しい岩肌と青い流れ、古い家が多いむかしながらの町並み、公園や学校のグラウンドで遊ぶこどもたちのすがた。むかしから暮らしてきたひとも、近年移り住んだひとも、ともにその良さを認める上秋津の風景だ。 


 あたらしく住民になった人のなかには、散歩やウォーキング、昆虫や植物採集に出かける親子も少なくない。他方で、地元の神社や寺にお参りをしたり、辻々にある何体もの野の石仏や神々めぐり、あるいは高尾山に登り眼下に広がるパノラマを楽しんだり、といったひとの割合は、もともと住んでいるひとにくらべて少ない。地域をよく知らないことが、大きな原因とみられている。

 地域のなかにとけ込みたいー地域活動に積極的に参加しているひとがいる一方、きっかけを探しているひとも多い。アンケート調査に答えたあたらしい住民たちの47%、約半数は地域活動に参加していた。しかし、「興味はあるが参加する機会がない」という答も27% 、3割近くもあった。「興味がなく参加したいと思わない」は9%と少ない。

 あたらしい住民も、地域社会の一員として上秋津の地域活動への参加を求めている。これにたいし、農家のひとたちも、「促進すべき」「ある程度必要」と“温度差” はみられるものの、非農家の勤労者世帯との交流・連携は必要と考えているひとたちが多い。

 「純農村」として生きてきた上秋津は、そのすがたを変え、ひとと暮らしの多様化が進んでいる。市街地のすぐ隣で、小さな地域社会は押し寄せる都市化・開発の波に、地域の再編・再構築を余儀なくされている。これ以上の都市化は地域農業に悪影響をおよぼす、否すでに影響が出始めていると現状を憂慮する声が聞かれる。農業と生きる地域は、今後どのような地域をめざすのか、あるべきすがたを求めて模索が続く。どのような答をだすのか、答を出すのは、住民自身である。

地域活動への参加