ふるさとはみどりなりき。 こどもたちのねじれる思い

@ふるさとはみどりなりき。 こどもたちのねじれる思い

学校は?家庭は?そしてふるさとはいま、こどもたちの目にどのように映っているのだろうか?
上秋津に住む小学校五年生から中学三年生までのこどもたち212人(89人、123人)を対象におこなったアンケート調査がある。

 「この地域に住み続けたいか」という質問に対して、小学生は「ぜひ」と「できれば」をあわせて62.9%、三人に二人が「住み続けたい」と答えた。“転出派”は、30%に満たない。しかし、成長するにしたがった、「住み続けたい」という“定住派”は減少する。中学生で「地域に住み続けたい」と答えたのは、「ぜひ」と「できれば」をあわせても36.6%、約三人に一人にとどまり、「ぜひ住み続けたい」は10人に1人(9.8%)もなかった。



 住み続ける、それとも住み続けない?こどもたちが書いている。「空気がきれい」「自然に囲まれている」「緑が多くて快適」「静か」、多くの中学生たちがふるさとにはまだ、自然が残っているとみている。自然環境が保全されている「生まれ育ったところ」は、「落ち着ける場所」だ。地域社会には「知っている人も多く」「なじみやすい」、「近所関係やいろんな取り組みがいい」、こんなふうに書いた中学生もいた。「親が農業をしているので、自分も農業を継ぎたい」、と将来の夢を書いた生徒もいる。

 しかし、ふるさとの環境の良さを認めながらも、「知っている人も多く」「なじみやすく」、結びつきが強い近所関係は、「プライバシー」が守られない、と指摘するこどももいる。濃密な人間関係がいまも残る地域共同体は、よいことばかりではない。こどもたちには顔なじみや面倒見がよい大人が、しばしばお節介でうとましい存在だったりする。

 ところで、若い世代にとって、いまの社会は容易に夢や希望を描きにくい社会になっている、のが現実である。そうした社会状況は、紀伊半島の南部にある地方の小都市のこどもたちのうえにも影を落とす。
 「現在の日本社会は、夢のある社会だと思うか」、こどもたちにたずねた質問がある。「夢のある社会だと思う」という答は中学生の場合わずか5%、小学生でも8%しかなかった。逆に「思わない」は、中学生で64%にのぼっている。つまり、三人に二人は夢がもてない、夢を実現しにくい社会と考えているのである。ちなみに、「思わない」は、小学生でも33%あった。
 この国の多くのこどもたちに共通する意識に違いない。夢を育めな夢のある社会だと思うか学歴や金の社会かい社会、学歴や金が幅をきかせる社会、中学生の二人に一人以上、57%はそう考えている。
 夢は持ちにくいのだが、都会への憧れは強い。「便利」で「仕事」がある、都市生活への憧れ。大きな価値は都市のなかにある、と考えるこどもたちは多い。「都会」は、魅力的なのだ。「ちがう地域に住んでみたい。夢がありそう」、ふるさとは、ねじれるような思いを抱くこどもたちに、どのような答を用意できるのだろうか。こどもたちが投げかけた問いかけ、おとなたちは薄々感じていたこどもたちの「変化」を、一連の調査を通してあらためて知ることとなった。


夢のある社会だと思うか


学歴や金の社会か