秋津野未来への挑戦−加工品、特産品を生み出す女性たち

●加工品、特産品を生み出す女性たち

 地域の伝統食や農産物を特産化し、地域の活性化に結びつけている、そうした女性たちの取り組みが全国各地に生まれ、そして広がっている。長野県にある人口3500人あまり、高齢化率40%という過疎の村・小川村では、60歳以上の女性たちがつくる伝統食焼きまんじゅうの「おやき」で年商7億円を稼ぎだし、村の重要な産業になっている。
 宮城県・岩出山町では、パンで5000万円、手打ちそばで1000円以上の売り上げをあげる女性たちの起業グループがある。岩出山町は、男女平等推進条例を制定したまちとして知られる。

 上秋津地域の女性を対象にした調査結果(2000年秋)がある。マスタープラン作成にあたって農家女性を対象に実施したものだ。調査では、6割(61.9%)の女性が「農業収益の安定・増大」を農業に望んでいる。 農産物の加工は重要な方策と思われるが、これについて品目よりも「質のいいもの」、ブランド品をつくるべきだとする答が62%と多くなっている。
 また、「質の向上はもとより品目も拡大すべき」という答は、11.6%あった。そして、75%以上の女性が産直・宅配といった消費者への直接販売に取り組む必要があると考えており、直売所への関心も高い。
 梅枯れ、農産物の価格低迷・輸入農作物の増大。農業をめぐる問題は、上秋津の農家女性にも深刻に受け止められ、やりがいや働きがいの喪失をもたらしている。地域を支える産業であるミカン・ウメ産業への危機感は強い。

 そのなかで、活力があり元気な地域にしていく道すじは、地場産業を中心にさぐっていくことにある。企業誘致や外部資本に頼る地域活性化ではなく、上秋津では柑橘類・ウメを中心とした農業ということになる。また、住民の意識を高め、より豊かな地域コミュニテイをつくりあげる、そうした地域の活性化をはかりたいという意思が読みとれる。
 2004年1月も終わる日の夜、J A 紀南上秋津支所・和歌山大学との共催による小さなフォーラムが開かれた。「秋津野の豊かな食について考え体験してみませんか」と名付けられた集会には、ゆばの巻きずしや里芋入りかきまぜご飯、「サンマのテッポウ」など、上秋津の各家庭などで作られてきた「伝統料理」16種類が並んだ。各地の30歳代から90歳代の女性が作ったものである。
 呼びかけたのは上秋津生活研究グループの女性たち。
 食の安全が問題になるなかでもっとも食に目を向け、地元の食のなかにある知恵を見出そうという試みだ。会場を訪れた約五〇人の参加者はほとんど女性だった。「若いお母さんと男性の参加がなかったのが残念。これからも続けたい」と主催者。食を活かした地域づくりの新しい取り組みだ。
農業に望むこと
消費者への直接販売について 農産物加工