秋津野未来への挑戦−何から取り組むのか。当面の重点目標

B何から取り組むのか。当面の重点目標

 重点目標を実現するには、やらなくてはならないことが多い。当面の重点的目標は、そうした課題のひとつひとつについて、向こう五年程度を目安に取り組んでいこうというものだ。取り組みは、重点目標の具体化である。

 取り組みを紹介する前に、七つの重点目標を、もう一度掲載する。環境保全型・循環型地域の創造、安心・安全な食べ物の供給拠点づくりと農業の総合化の推進、農村的要素と都市的要素の融合した地域の創造、「草の根文化」の創造、「遊びの場」の整備と福祉の充実、訪問者に感動と親切なもてなし(ホスピタリティ)を提供できる地域づくり、地域住民の「協働」の輪の拡大、ほかの地域との交流・連携の強化、の七つである。重点的取り組みは、具体的な行動事例を示している。

 環境共生型・循環型地域の創造のためにあげているひとつが、生ゴミの堆肥化である。家庭から出る生ゴミを堆肥化して土壌に還元し、台所と果樹園をつなごうというのだ。また、行き場を失っている廃食油を石けんなどに再活用する、そのためには推進するグループづくりが急務である。「菜の花プロジェクト」は、菜の花を河川敷や休耕地などに植えて美しい景観をつくるとともに、そこからとれる菜種油を生活のなかで使おうというものである。里山に繁殖している竹を伐採して美しい里山をよみがえらせ、切った竹は炭として活用する。炭は、水質の浄化や土壌の改良材として利用できるからだ。環境共生型・循環型の地域づくりは、まずここから始めようと提案している。

 安心・安全な食べ物の供給拠点づくりと農業の総合化の推進のためには、地域農業に重点的に取り組むとして、四点あげている。有機農業や特別栽培に対する啓発活動の強化、環境共生型農業とエコファーマーの育成、安心・安全の上秋津のブランドづくりと消費者との直結、農業の総合化の推進である。環境に配慮し、環境を保全しながら農業をするひとを育てるとともに有機農業などを広めて、安心で安全な農産物・加工品をつくり、それをブランドとして確立しようというのだ。生き残りのためには、生産だけでない農業が、これからは求められている。

 都市化はこれからも避けられない。それだけに、農村と都市の対立ではなく、融合によってあたらしい地域コミュニティはつくられることが大切になっている。住宅・都市的施設の建設や土地利用について一定の規制力をもった「地域協定」を策定し、無計画に進む都市化の規模や速度などに適性基準を設けていこう、というのが農村的要素と都市的要素の融合した地域創造の柱になっている。そして、農地と住宅地などの「際」(きわ)、境目にフラワーベルトをつくったり、植樹をして美しい景観をつくろうというのである。

 地域社会は、住民が誇りと自信をもてるものでなくてはならない。文化の創造、交流の場は、そのための大切な要素である。すぐれた公民館活動の伝統をふまえ、田園合唱コンクールや花をテーマにした文化イベントの開催などが考えられる。「草の根文化」の創造、「遊びの場」の整備である。福祉の充実のための、上秋津独自の福祉プランの策定も必要だ。

 地域づくりで成果をあげてきた上秋津であるが、取り組むべき課題は山積している。地域の魅力をもっと掘り起こし、磨きをかけていく必要がある。ホスピタリティ、親切なもてなしの心は、その地域を一層魅力的にする。訪問者に感動と親切なもてなしを提供できる地域づくりのためには、直売所、観光農業、市民農園のほか、イベントの充実も課題になっている。散策道や案内図、標識、休憩所などの整備が求められる。

 地域づくりは、ひとである。地域には、さまざまな能力や技術をもったひとがいる。人材はあるのだ。そうしたいろいろなひとの能力や技術、また奉仕の精神を地域づくりに活かすのには、受け皿が必要である。「協働バンク」をつくって、住民の「こういうことができる」という提供できる能力や技能、ボランティアを数量化して「バンク」に預け、引き替えに地域通貨たとえば「あきつ」のようなものを創設し、支え合いのネットをつくることが考えられる。地域住民の「協働」の輪は、今後さらに拡大されなくてはならない。

 上秋津地域がほかの地域との交流・連携を強化するために、会津川流域の村や地域で流域連合を結成し、ひとつの地域では考えられない魅力的なイベントの開催や商品開発が可能になる。また、都市住民との交流の推進とそのための体験・宿泊などの受け入れ施設を整備することも大事だ。そこでは、小学校の総合学習への対応など、交流のためのいろいろなプロジェクトの開発ができる。

 「マスタープラン21 」に示された当面の取り組みは、主なものだけでも二一項目にのぼる。どれをどのように実行に移していくかは、地域に住むひとたちがどのような価値を見出し、判断していくかによる。ちなみに「プロジェクト」のなかには、すでに取り組みを開始したもの、あるいは近く動き出そうとしているものがあることを記しておく。