上秋津のことわざと迷信

 「今日の天気はなっとうないの?」(昨日はブト飛んだし、東風の昼降りと云うさか、昼頃から雨になるで)とか、「ネブカの種に宿かすな、と云うさか種取って、じきに播いたらええんや・・・・・・・・・・・・・・・。」
 今でも日常の会話に、こんな「ことわざ」がよく出てきます。
 世の科学文明がすばらしく進歩する現在にあっても、私たちの祖先が残してくれた「ことわざ」は端的でおぼえ易く、それ相当の根拠があり、的を得ています。
 上秋津地方で使われているものについて、老人の皆さんにお聞きしてみました。
 当地方特有のものもありますが、全国共通のものが多い様に思いました。



上秋津地方特有と思われるもの

・ 秋津男はゴンボの煮しめ、色は黒いが味は良い。
・ 秋津男に三栖女。
・ 秋津男に見すんな女。
・ 紀州みかんは有田が本場、風味あるのは秋津柑。
・ 秋津金柑、子供のお菓子、風邪とハシカに良く売れる。
・ 味の良いのを土産におあげ、秋津富有柿日本一。
・ ミカン買うたら皮あぐら、金柑買うたら実あぐら。
・ 秋津のうらに三栖ないら。
・ ミカンが黄色くなったら医者が青くなる。(ミカンはビタミンCが多く、病気が治る)
・ 竹は六十年に一回花が咲く。
・ 土用なかばに二葉。(小豆の播き時)
・ カラス鳴きは不吉。
・ 土喰て虫喰て口、シーブイ。(ツバメの鳴き声)
・ チット喰えチット喰え、モーチット喰え。(コジュケイの鳴き声)
・ ヘクソカズラも花盛り。(匂いの悪いカズラでも花咲く頃は美しい)
・ 雷にヘソ取られる。(低気圧が近づくから薄着していたら腹に悪い)
・ ドクホウジ咲く頃、大根の播き時。(マンジュシャゲ)
・ はよ田植え休み来い、大根播きおそうせ。(昼休みの目安とされた)
・ ウドの大木柱にならん。
・ お里が知れる。(育ちが分かる)
・ みそにふたする。
・ ポット鳥鳴いたらカツオが大漁(山バト)
・ 煮ても焼いても食えん人や。
・ ヒゲ雨降る時、キツネが嫁入りする。
・ 人事言えばムシロ敷け。
・ 回りしようね。
・ 目んとこ玉、とび出る。
・ かじ屋の明日、こん屋のあさって。
・ 寝てモチ食たら粉目に入る。
・ えらけりゃ星っさんの数、かんじょして見いだ。
・ 花、もたいたれ。
・ 人のうわさん七十五日。
・ うそはぬすっ人の始まり。
・ くそみそ一緒。
・ 腹にえくり返る。
・ ヒルに塩。
・ すいも、からいも、知ったある。
・ 腹みえすいたある。
・ 子供の生まれる時は満潮、人が死ぬ時は引き潮の刻に死ぬ。
・ 青竹でハビをたたくな。
・ 夜のくもは親の顔に似ていても倒せ、朝のくもは鬼の顔に似ていても殺すな。
・ 蛇の夢はよい、金が入ってくる。
・ 牛の夢を見ると、風邪をひく。
・ 本や新聞をふむとえらくならない。
・ 敷居とか、マクラをふむと、親の頭をふむのとおなじ。
・ 子供が火遊びすると、寝小便する。
・ 夜爪を切ると、親の死に目に間に合わぬと言う。
・ 草履は朝おろすもの、昼からは炭をぬる。
・ 蛇に指さすな、指がくさると言う。
・ 足の親指次の指が長かったら出世する。
・ 三人で写真をとると、中の人が早く死ぬ。
・ 朝蜘蛛は福、夜蜘蛛は殺せ。
・ 幼児がみみずに小便かけると、「チンチン」がはれる。そのみみずを清水で洗ってにがしてやるとなおる。
・ 北向枕に寝るものでない。便所にはまると名前を変える。
・ 下駄の鼻緒が切れると、災難がある。
・ 足がしびれて歩いたら中風になる。
・ 冬至の火に、かぼちゃを食べると中風にならない。
・ 洗たく物は夜干すな。
・ ほうきかつぐと出生できぬ。
・ 三りんぼうに棟上げするな。
・ 田植、岸からすると、逆子が生まれると言う。
・ もち苗、苗代へ植えるな。
・ 髪の毛を焼くと、七代貧乏する。
・ 朝のお茶、茶柱が立つと縁起がよい。
・ 食後すぐ横になると牛になる。
・ 箸にはさんで物をやりとりしない。
・ 家に鳥が飛び込むと福、蜂が巣を作ると凶。
・ う、みそ、寅酒は悪い。(卯、寅の日はこうじ花作ってはいけない)
・ 指のさかむけは、親不幸のしるし。
・ 男の人に女の赤ちゃん、女の人に男の赤ちゃんの名前を付けてもらうと健康に育つ。
・ イボを教えるとふえる。
・ コンニャクは、体の中の悪い砂をとってくれる。
・ 物を進呈するとき、南天、その他の木の葉をそえる。
・ 友引に葬式出すな。
・ 夜口笛を吹くと、魔が集まると言ってきらう。
・ カゴを頭にかぶると、成長しないと言う。
・ いたちの道きりを見ると不幸がある。
・ ねずみのいる家は火難がない。
・ うなぎと梅干は、食い合わせ腹痛になると言う。
・ ザクロを屋敷に植えると、親子が離ればなれになる。



農業とことわざ

・ 米は八十八の行をなす。
・ 親の意見とナスビの花は千に一つのあざがない。
・ 二月の投げ松。(旧暦の二月頃松の植えかえがよい)
・ 木もと竹うえ。(割る時は木もとから)
・ 米は山から麦は里から。(出来てくる)
・ 桜切るバカ、梅切らぬバカ(梅は剪定すればよい)
・ 苗代半作。(良い苗を作れ)
・ 茶と百姓はしぼればしぼる程出る。(税金)
・ 出穂見て二十日穂を見て二十日。(稲刈 時期)
・ 灰なくして豆播くな。(灰にはKが多い。豆はKが多くいる)
・ ナスビと小豆は友露きらう。(株間を広くせよ)
・ 日なたナスビに陰ショウガ。(植える場所)
・ 余り苗、見ずしてショウガの芽は出ない。
・ ナタネの花盛りには、絵に画いたニワトリでも卵を生む。
・ ネブカの種に宿貸すな。(すぐ播け)
・ 三日苗。(稲の苗は取って三日目になると悪い)
・ 雨栗日柿。(花の咲くとき栗は雨水、柿は昆虫によって花粉交配する)
・ 二百十日の別れ水。(水田の水を止める時期)
・ におい松茸、味しめじ。
・ 畑やせたら豆作れ。(豆は根粒菌あり土を肥やす)
・ 百姓百色。
・ ホーレン草の種はハオリ着て播け。(涼しくなってから)
・ 桃栗三年柿八年、袖は九年で成り始め。
・ おうちゃく者の節季働き。
・ 雪は豊作のしるし。
・ 雨後のたけのこ。
・ 冬至十日はバカでも知っている。(正月)
・ 夕焼けにカマ磨け。(明日は晴)



上秋津地方の天気とことわざ

・ 東風の昼降り。
・ 霜折れ。(朝降りた霜がすぐ解け出す、天気がくずれる)
・ 土用なかばに秋の風。
・ 八十八夜の名残り霜。
・ 暑さ寒さも彼岸まで。
・ 風と坊主は昼の出。
・ 高尾山の霧が上がれば晴れてくる。
・ 海鳴が近く聞こえると雨が近い。
・ 汽笛が近く聞こえると雨が近い。
・ 夜上り三日。
・ 梅雨は雷ぎり。
・ ながせの宵晴れ。(梅雨)
・ 東風・・・・・・雨 北風・・・・・・晴。
・ 朝焼けは雨、夕焼けは晴。
・ お月さんが傘さしたら雨近い。
・ 雪夜かモチ夜か。(モチつく所は暖かい、雪の静かに降る夜は暖かい。)
・ ブトがまじないしんい来たら明日は雨。
・ 秋の日はつるべ落とし。
・ 女心と秋の空。
・ フルツク(フクロウ)鳴いたら日和が続く。
・ 鳥が水浴びすると日和落ち。
・ ありが行列すると大雨降る。
・ 高い山へ雲がかかると雨降らない。
・ 早朝に小雨降ると、あと降らない。
・ 夕焼けがすぐ消えると日和が落ちる。
・ 水焼けは大雨が降る。
・ 鯉(川魚)が飛びはねると日和落ち。
・ 南の明るいのと女の賢いのは当てにならん。
・ 霧が低く下りると天気がつづく。
・ 朝虹は雨、夕虹は晴。
・ 雲が上ると雨、出ると日和。
・ はちの巣が高いと大風がない。低いと大風が吹く。
・ 卯、辰の雨は巳で止る。
・ 星がまたたくと雨近い。

地震
四ツ八ツ 日和
五 七 の 雨
六ツ九ツ 国の騒動(大きい)



生活とことわざ

・ ぬすっ人捕まえてナワない。(準備が出来ていない)
・ 始めチョロチョロ中パッパ、赤児なくともふた取るな。(おいしいごはんのたき方)
・ ウリのつるにナズビはならぬ。
・ カエルの子はカエル。
・ トンビがタカを生む。
・ ミカン所に美人多し。
・ 早起きは三文の徳。
・ 彼岸過ぎて麦の肥、土用過ぎて稲の肥、二十過ぎての子の意見。(むだであり、むしろ有害である)
・ 人は人中、田は田中。(多くの人に接するのが良い)
・ 秋ナスは嫁に喰わすな。(あくが強い)
・ 娘十八、ばん茶も出花。
・ *棚からボタモチ。
・ 縁の下の力持ち。
・ *猿も木から落ちる。
・ 三つ子の魂百迄。
・ ぬれ手で粟つかむ。
・ 山椒は小粒でもピリリとからい。
・ 石の上にも三年。
・ 能あるタカは爪をかくす。
・ うわさをすれば影。
・ 身から出たさび。
・ 知らぬが仏。
・ *人のふり見て我ふり直せ。
・ もちはもち屋。
・ 千の倉より子が宝。
・ 住めば都。
・ カエルのツラに水。
・ 旅は道づれ世は情け。
・ *はしにも棒にもかからん。
・ *地獄の道も金しだい。
・ 油断大敵。
・ サジを投げる。
・ 目の上のたんこぶ。
・ 火のない所に煙は立たん。
・ 丸い卵でも切よで四角、人も言いよで角が立つ。
・ 負けるが勝ち。
・ 真綿で首しめる。
・ 笛吹けど踊らず。
・ 転ばぬ先の杖。
・ 後は野となれ山となれ。
・ 弘法も筆のあやまり。
・ 悪銭、身につかず。
・ 渡る世間に鬼はない。
・ 旅のはじはかき捨て。
・ 腹八分目に医者いらず。
・ 二足のわらじをはく。
・ 骨折り損のくたびれもうけ。
・ どん栗の背くらべ。
・ ちりも積もれば山となる。
・ *地獄で仏。
・ やけ石に水。
・ 播かぬ種は生えん。
・ 芸は身を助ける。
・ うそも方べん。
・ 尾を振る犬はたたかれん。
・ くさっても鯛。
・ 薬くそう倍。
・ 三人よれば文殊の知恵。
・ 先立つものは金。
・ 清水の舞台から飛び下りる。
・ ただほど安いもんはない。
・ ただほど高いもんはない。
・ 泣く子と地頭には勝てん。
・ 楽は苦の種、苦は楽の種。
・ 損して得取れ。
・ 鶴の一声。
・ 猫に小判。
・ 七転び八起。
・ 名物にうまいものなし。
・ けがの功名。
・ こけてもただでは起きん。
・ 柚の木へ裸で登るか。
・ 安物買いの銭失い。
・ 昔取ったキネヅカ。
・ 好きこそものの上手なれ。
・ 舌をまく。
・ 足が地に着かん。
・ 白い歯見せんな。
・ 生馬の目を抜く。
・ 売りものに花咲かせ。
・ 足元見られる。
・ 二足三文。
・ カンコ鳥なく。(人が集まらない静かな事)
・ 火の車。
・ 水のあわ。
・ 油売る。(サボる)
・ お茶をにごす。
・ *タナからボタモチ。
・ そが、柳の木の下にドジョウはない。(ぐう然は、何回もない)
・ 飼犬に手をかまれる。
・ *猿も木から落ちる。
・ トンビに油あげさらわれた。
・ 畳の上でケガをする。
・ 船頭多過ぎて前へ進まん。
・ かんでくだくような話。
・ 右と云えば左。
・ 水をさす。
・ 横槍入れる。
・ 横車おす。
・ 上げ足取る。
・ ちょうちん持ち。
・ 理くつとこうやく、どこへでもひっつく。
・ 立板に水。
・ いたちごっこ。
・ 出る杭は打たれる。
・ 花より実を取れ。
・ 下駄あずける。
・ 口は禍のもと。
・ くちばし黄色い。
・ 尻馬に乗る。
・ 口から先に生まれる。
・ 猫なで声。
・ 口車に乗る。
・ 大風呂敷ひろげる。
・ 手前みそ。
・ 吐いたつばはのめん。
・ 下手の長談義。
・ 話に花咲く。
・ 歯に衣着せん。
・ 口八丁、手八丁。
・ 燃えるに火油そそぐ。
・ うの目、たかの目。
・ 犬の遠ぼえ。
・ 死人に口なし。
・ 影も形もない。
・ 泥をはく。
・ 八方美人。
・ 目から火が出る。
・ ぬき足、さし足、しのび足。
・ 焼石に水。
・ *人のふりみて我がふりなおせ。
・ 頭かくして尻かくさず。
・ 重箱のすみをほじくる。
・ とりつく島ない。
・ 人のふんどしで角力とる。
・ 乗りかかった船。
・ ひいきのひきたおし。
・ 天にちばする。
・ 腹見えすく。
・ 身から出たさび。
・ 貧乏くじ引く。
・ 泣き面にハチ。
・ 寝た子を起こす。
・ 大は小をかねる。
・ 帯に短し、たすきに長し。
・ *箸にも棒にもかからん。
・ つむじ曲がり。
・ 他人のそら似。
・ 恥の上塗り。
・ カンニン袋の緒が切れる。
・ ごうを煮やす。
・ 腹の中へおさめる。
・ かんしゃく持ち。
・ 鳴かず飛ばず。
・ 三日坊主。
・ 打てばひびく。
・ 窮すれば通ずる。
・ 願ったりかなったり。
・ 二度ある事は三度ある。
・ 三拍子そろう。
・ 朝日の登る勢い。
・ やせがまん。
・ 貧乏ひまなし。
・ つじつま合わす。
・ 我が田へ水引く。
・ エビで鯛つる。
・ のどから手が出る。
・ *ころんでもただでは起きん。
・ 金とたんは、たまる程きたない。
・ 左うちわ。
・ 馬子にも衣裳。
・ やせ子の大ぐい。
・ 食わず嫌い。
・ かけつけ三ばい。
・ 同病相あわれむ。
・ さじ投げた。
・ 立てばシャクヤク、すわればボタン、歩く姿はユリの花。
・ 白羽の矢立つ。
・ 箱入り娘。
・ 明日は明日の風が吹く。
・ まくらを高くして寝る。
・ かゆい所に手がとどく。
・ 泣いても一生、笑っても一生。
・ おぼれる者、ワラをもつかむ。
・ 一寸先はヤミ。
・ 青菜に塩。
・ 渡る世間に鬼はない。
・ 毒にも薬にもならん。
・ 内弁慶。
・ 死んで花咲く。
・ 命あっての物種。
・ 所変われば品かわる。
・ 夜道に日はくれん。
・ 鬼のない間にせんたく。
・ 枯木も山のにぎわい。
・ 大水の引いた後みたい。
・ 来年の事云うたら鬼笑う。
・ 猫の手もかりたい。
・ 盆と正月一緒に来たような。
・ 十年一昔。
・ 赤子の手ねじる。
・ はらわたくさったある。
・ 腹さぐる。
・ 竹割った様な気性。
・ 捕らぬ狸の皮算用。
・ 図にのる。
・ 釣り落といた魚は大きい。
・ 頼みの網。
・ 的をえる。
・ 知恵熱。
・ ばち当る。
・ 痛しかゆし。
・ 思い立ったが吉日。
・ 二つに一つ。
・ カラスの行水。
・ 虫のしらせ。
・ 足元の明るい内。
・ 借って来た猫。
・ 大船に乗ったよう。
・ 出ものはれもの所嫌わず。
・ 立つ鳥、あとをにごさず。
・ 背に腹変えられん。
・ 恩を仇でかえす。
・ かごの鳥。
・ たで食う虫も好きずき。
・ ナスと男は黒いがよい。
・ 月とスッポン。
・ 似た者夫婦。
・ 夫婦げんかは犬でも食わん。
・ 一姫二太郎。
・ 寝る子は育つ。
・ 子の親にしてこの子あり。
・ とんびが鷹を生む。
・ かわいい子には旅をさせよ。
・ 親のすねかじり。
・ 親の七光。
・ 遠くの親類より近くの他人。
・ 友は友を呼ぶ。
・ 同じ穴のむじな。
・ 仏の顔も三度。
・ すてる神あれば拾う神あり。
・ 知らぬが仏。
・ 神も仏もないものか。
・ *地獄で仏。
・ *地獄のさたも金次第。
・ 地震 雷 火事 おやじ。
・ 対岸の火事。
・ 飛んで火に入る夏の虫。
・ のるかそるか。
・ 年貢の納め時。
・ 売り言葉に買い言葉。
・ しっぺ返し。
・ 売られたケンカ。
・ くもの子をちらすよう。
・ 旗色悪い。
・ 手に汗にぎる。
・ まないたの鯉。

* 印は、重複していたり、同じような意味ですが、一応掲載してみました。



まじない

目パチコが出来たら
・ 障子のサンへ、もぐさを置き、それに火をつけ、その煙を目パチコへつける。
・ つげの木のくしの、後を、たたみでこすり、熱いのを、目パチコへ、つける。
・ 人の家の窓から、おにぎりを、もらうとよい。
・ 井戸の中へ、小豆を一粒づつ投げながら「目パチコだと思ったら、豆だった」と三回唱える。
・ 洋服の前身頃の下の裾のすみを、糸で小さく、くくって「アビラウケン、ソワカ」を三回唱えながら、目パチコへつける。
目にゴミが入ったら
・ 「オン、アビラウケン、ソワカ」を一回唱える舌で上唇を三回なめる。
やけどをしたら
・ コップの中に水を入れて、「山の大蛇が火にくばり、焼けず、ほとらず、きずつかず」と言いながら、その水をつける。
ハチにさされたら
・ 石を拾って、九と書き、さされた箇所に当てる。その石を、もとの所へ返しておく。
かぶれができたら
・ かぶれた箇所を、アブラアゲでふき、そのアゲを焼いて食べる。
のどに魚の骨がささったら
・ ぞうげで、のどぼとけを、上から下へなでる。
・ 魚の骨を頭にのせる。
・ 「骨あげます」といってご飯を素のみにするとよい。
・ 仏様の花立ての水を飲むとよい。
・ 墨を持って皿に「アビラウンケン」と書き、それを水で洗い落とし祈念して飲むこと。
・ 尚抜けなかったら、その反対に「ンケンウラビア」と書き前のごとく、祈念して飲むこと。
かん虫
・ 子供にかん虫が出た時は、手のひらに、三回墨で「馬」と書き、それを消して口で息をかける。
体にできものができたら
・ 刃物を持ち、次の事を唱える。
「ハクシャク」のつるぎをもって、毒薬の病の根を切りて、「オンジリジャー、オン、アビラウンケンソワカ」を三回唱える。
手首が痛くなったら
・ 障子のサンへ、手首を入れ、女の人ならば、男のおち「末の子」の子に、男の人ならば、女のおち「末の子」の子に、白糸でしばってもらうとよい。
流感にかかったら
・ 三辻に線香を立てて、送るとよい。
はしかにかかったら
・ 「子供留守」と書いて戸口に貼る。
・ エビの皮をせんじて飲む。
百日咳にかかったら
・ 新しいしゃもじに、生年月日を書いて、水引をかけ、井戸につるしておくとよい。
目のわるい時
・ 目の字を、年令の数だけ書いて、薬師さんに供える。
イボができたら
・ ナスのへたを、こすりつけ、そのへたを、土に埋める。
・ 地蔵さんの花立水を、イボにつける。それを一週間続ける。
・ 蜘蛛の巣の糸で、イボを結ぶ。
・ 釣鐘のイボをわらで片手で結ぶと、とれる。
歯痛止め
・ ヘビのぬけがらを、土に埋めてほうむる。
・ ヘビのぬけがらを、せんじて飲む。
・ 葱の種を耳のそばで振るとよい。
・ 虫是江南虫 郤来喰我歯
釘在椽頭上 永世不還家
上の呪文を紙に書き、七重に折って、その上に虫の字を書いて、便所の北向の柱に釘でうちつけ、「アビラウンケン」を七回唱える。
顔にはたけが出来たら
・ はたけが出来た箇所に墨で田と云う字を書く。
・ 雨ガエルのお尻を、その箇所につけて、そのカエルをきれいに洗って、元に戻してやる。
赤ちゃんの顔がいびつになったら
・ 親の息をかけて、なでてやると、自然になおってくる。
赤ちゃんに赤あざができたら
・ 親のつばをつけてなでると、自然にとれる。
夜泣き
・ にわとりの絵を書き、布団の下へ、さかさにしておさえて寝る。
・ 「伸田山の白ギツネさん、昼は泣くとも、夜は泣くな」と紙に書いて、枕の下へおさえて寝る。
・ にわとりの絵を二匹向かい合わせにして書き、さかさにして、外のくどに張って、拝みます。
・     如律令
この文を白紙に書き、小児の左右の手のひらにはること。
車船のよい止め
・ 足の裏に「土」と書き、「オンアビラウンケン、ソワカ」と三回唱える。
・ へそに梅干を張る。
針を失ったら
・ 「さいじ法師の麻の衣を縫う針はどこへ行ったやら、オン、アビラウンケン、ソワカ」を三回唱える。
糸がもつれたとき
・ 「しやしやむしやの、むしやしやの、しやしやのしやしやむしやの、むしやしや、なければ、しやしやもなし」と三回唱える。「ナムアミダ、ウンケンソワカ」を三回唱える。
はずかしがりを治すには
・ 草履で顔をなでる。
・ 手のひらに人と書いてのみこむ。
無病息災
・ ししまいの頭につけた神紙を拾って神棚に、供えるとよい。玄関の上にまつると良い。
女の人の病気を治すには
・ 三月三日のひな祭りの火に丸いよもぎもちを重ねて、加田の淡島さんの方向へおそなえして、それを女の人で分けて食べると病気にならない。
長寿
・ ひなまつりの日、おひなさまをかざる時に一緒に「わけぎ」を根をつけたままおそなえする。
これは白髪になるまで長生きをすると言う意味。
安産
・ 子安さんの御詠歌をとなえる時に使ったローソクの小さくなったのをもらっておいて、お産が始まった時にそれをともす。(出来るだけ小さいローソクの方がお産が早くすむ。)
しゃっくりがおさまらないとき
・ お茶碗に水を入れ、その上に割りばしを、十文字にし、その四つ角をのむ。
・ 鼻をつまんで水をのむ。
・ うしろからびっくりさせる。
・ 立って後向きになり、足のうらを見る。
・ 鍋ずみをのむとよい。
きもがえり
・ たわし水をのむとよい
へび(はび)に会わぬには
・ 「われ行く先に、かな子、まだらの虫あらば、大和姫にかつやかたらんぞ」と三回唱える。
・ ヘビの歌「人はこわがる、わしゃ人こわい、巳に生まれて、なさけなや。」
火事にならないには
・ 月見の時の、花水を一升びんに詰めて、保存し、火事になったら、その水をかける。毎年新しい水にとりかえる。
お金持ちになるには
・ 品
右の呪文は、どんなに貧しくても、お金持ちになれる。もし福徳を得ようと思う人は、柳の木の札にこの呪文を書いて、玄関のそばに埋める。それを秘密にしなさい。
うづき病になったら
・ 「アビラウンケン、ソワカ」を唱えながら、患部の上を刃物をぐるぐる廻し最後に息を吹きかける。
手豆ができたとき
・ 水ぶくれになったところへ、硯墨をぬった糸を、針で通すとよい。

今までの中で、「オン、アビラウンケン、ソワカ」がよく使われていますが、そのわけは、大日如来さんの短いお経です。
 呪文は、いずれも一息に唱えなければ、ききめがないと云う。他人にこれを教えると、その人の呪文はききめがなくなると云う。秘密にされているものが多い。



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