秋津野未来への挑戦−都市と農村の交流は第2楽章

●都市と農村の交流は第2 楽章

 2003年初め、きてら利用者など地域と関わりがある県内外、東京や大阪などに住むひとたちあてに、文書が届いた。添えられた手紙には、「一家倶楽部」という会の立ち上げに関する案内がいっけくらぶ書いてあった。
「一家倶楽部」。「一家」、聞き慣れない身には「やくざ」の「○○一家(いっか)」を思わず想像させる“物騒な”(ひとつも物騒ではないのだけれど)名前は、よく読むと「親類づきあい」「仲間内」という親しい間柄を指すことがわかり、納得した。つまり、「一家倶楽部」は親類のように親しい仲間たち、の意味になる。要は、きてらを中心とした上秋津応援団、ファンクラブを組織する、ついては入会されないかというお誘いだったのである。

 大分県・湯布院町。地域づくりの先進地として知られるこの町には、由布院温泉という地域資源と農村の景観保全しながら地域づくりを進めてきた。その結果、かつて「ひなびた寒村」と呼ばれた町は、年間約400万人ものひとたちが訪れる「すぐれた観光地」へと変身する。その湯布院には、「親類クラブ」という都市とを結ぶネットワークがある。「映画祭、音楽祭、それらのイベントは地元だけで出来ることではない。湯布院を愛するひとたちの知恵を借り、ともに地域づくりを進めていこうと」する目的から生まれた。上秋津の「一家倶楽部」もまた、そうした発想から生まれた。

 倶楽部」に入会するには、10万円が必要である。産品直売所きてらの経営を安定化させ、都市と農村の交流をはかっていく拠点のひとつに育てていこう、とのメッセージがこめられている。
 会員は、いわば「こころの株主」ということになる。二一人が会員に登録した。年に一度送られてくるきてらセットと通信が、紀南地方の農村、生産者と都市、消費者双方を結ぶ。交流会も開かれた。お互いが相手に学び合い、上秋津のこれからを話し合う場にというねらいがある。

 上秋津では、インターネット上のホームページの開設が盛んだ。秋津野塾だけではない、農家の若手経営者らを中心にそれぞれの農園のホームページがいくつも立ち上げられている。メディア研究会によるI T を活用した情報発信、ラジオ放送での特別番組やC M 放送、新聞、パンフレット、さらに地域間交流。秋津野直売所きてらは、ネットワークを広げるなかで発展をめざす上秋津の地域づくりの一翼を担いつつある。「一家倶楽部」は、その核をめざす。