秋津野未来への挑戦−都会にはない香り高い農村文化社会の実現を

●都会にはない香り高い農村文化社会の実現を

  「都会にはない香り高い農村文化社会」を実現し、「活力とうるおいのある郷土」を作ろう。そうした理念と目標を掲げて、1994年9月、秋津野塾は設立された。表をみていただきたい。町内会、上秋津女性の会、老人会、公民館、消防団、小中学校の育友会・PTA、商工会、上秋津を考える受賞者にお言葉をかけられる天皇・皇后両陛下会など 二四の団体が加盟し て い る。そして、 11の区と55班が参画する。つまり地域に あるすべての団体が名前を連ね、タテ・ヨコに統合された組織が秋津野塾なのである。これが最大の特色だ。

 秋津野塾は、「地域づくり塾」で ある。環境、健康、 福祉、教育、 防災、農業、 地域社会には、いろいろな 課題がある。 そ うした課題について、住民がみずから考えてひとつひとつ解決し、快適で安全で、健康に安心して暮らせる、 生き生きした地域コ ミュニティを作 っていくことを目的としている。
 秋津野塾のもうひとつの特色は、「地区全住民の幅広い合意形成」をはか っていく場である、ということである。上秋津では、塾が結成される以前から、むらづくり活動を展開してきた。何か事業をおこなう、生活課題の解決に取り組む、そういうときは、 そのつど組織をつくって話 し合い、ものごとを決めてきた。
 地域における問題は、 年々多様化し、 複雑化する傾向 がある。また、 新しい住民の増加は、それだけいろいろな価値観を有するひとたちが、同じ地域 内に暮らすことになる。多くの住民 の幅広い合意を得ながら、地域づくりを総合的に有機的、機動的に進めていくには、多くの団体の意思が反映する組織が必要だ、と秋津野塾は考えたのである。端的に言えば 、“場当たり的”に陥りやすい、従来型の「決定システム」からの脱却を意味した。

 地域が取り組む事業や活動は、秋津野塾の企画委員会で企画・立案され、必要に応じて各団体の代表が出席する全体会議で検討し承認する。それによってものごとにすぐに対応できる体制になっている。地域に住む住民が問題を幅広く共有し、住民ひとりひとりが一地区一団体の住民であるととも に「地域住民」で あるとい う自覚を深める。 各団体が連携しながら、「地域力」を高めていこうとするところに、秋津野塾の特色がある。
 地域にかかわるひとたちに共通しているのは、自立し、パートナーとして連携共同するすがたである。秋津野塾の三つ目の特色が、そこにある。地域の問題は、自分たち住民が決めるのだという姿勢である。「いたずらに 行政をあてにするのではなく、住民ができることは住民がする。そして、必要に応じて、行政の支援・協力を仰ぐ。多くの住民の総意は、行政を動かす力になる」、塾長で自動車販売会社を 経営する楠本健治さん(1942年生)は、こう強調する。